1 日常 「にちじょう」

機動六課隊長室。
八神はやては親友である、高町なのは、フェイト・T・ハラオウンと
穏やかな午後を過ごしていた。

「二人とも、本当にええんか?」

はやては二人に確認するように問いかけた。
今回の事件は被害者である六課のメンバー全員にとって、
強いトラウマとなりかねない出来事だった。

故に記憶封鎖という治療を行う必要があり、
既にスバル、ティアナ、エリオ、キャロを初めとする若手達は
今回の事件の記憶を完全封鎖するという処置がとられていた。

しかし、なのはとフェイト、はやてはこの治療を断ったのである。

「うん、今回の事は自分への戒めとして残しておきたいの。
 私のどこかに、きっと慢心があったんだと思う。
 だから、あんなにあっさりと操られちゃったんだって…」

「私もだよ、なのは。あの人の声は私が向き合わなければならない事を
 次々と突いてきて…心の脆さが招いた事なんだと思う。
 それに、エリオやキャロを巻き込んじゃった事が悔しくて…」


二人は罪と罰を背負う、と言った。
操られていたから、自分達に罪は無い等と言えないのだ。
そして、それははやても同じだったが、しかし…

「でもなぁ、二人とも。私もそうやけど、
 あれ、かなりトラウマってるんが本音でなぁ、あの…、その……」
 
「………」
「………」


三人はお互いの顔を見合わせた後、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
記憶を全て残すという事は、つまりそういう事で。
自分達の意思でなかったとはいえ、三人は肉体関係を持ってしまったのだ。
同性同士で、しかもかなりアブノーマルなプレイを。

「!…そうだ、フェイトちゃんのあの時、すごかったなぁ!
 ご主人さまぁ〜って、あの格好で暴れてぇなぁ!!
 いっそ次の真ソニックはあのデザインでいったら…」
「!!はやてぇ!それは言わない約束だよ!はぅぅ〜、はずかしいぃ……」
「はやてちゃん!!」
「あぅ、ごめん…、なんか気まずい雰囲気誤魔化そうと思ったけど
 逆効果やったな…」


しばらくお互いの顔を押し黙って見ていた三人だったが…

「ぷっ……」
「あははっ、はやてちゃん空気読めなさすぎ♪」
「もう二人してぇ…、なのはもはやても、皆で変態さんモードだったのに…
 何で私だけ弄られるのかなぁ」


何だか急に笑えてきた。
思い返せば、笑い話のようなもので。
しかし、忘れてはいけない敗北の記憶でもある。

三人は今後も、この敗戦を逆に糧として、より強く成長していくだろう。
全ては、世は事もなしといった風情で日常へと戻っていく。



そう、全ては元通りになるはずだった。



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