6 宴  「うたげ」

かすかに声が聞こえる。
熱い吐息と喘ぎ声の連鎖。
それは段々と大きくなり、それに伴って意識が覚醒、
深淵の闇から引き戻される。


「……!?なんや、なんやこれ!!」


はやては目の前に展開されている光景が理解できなかった。
正気でなんて、とてもいられない。
一言で言えば、狂気に満ちた光景だった。

目の前で女達が絡み合っている。
皆一様に快楽の表情で喘ぎ声を上げ、
涎を垂らし、淫らな醜態を晒していた。

奇妙なのは、女達が皆同じ格好をしている事だ。
最低限の部分すら隠せないスリングショット水着、
黒く艶光するエナメルのボンデージ風装飾。


そして、それらは全て。
彼女にとって見知った顔ばかりだった。


『エリオォ?せっかく可愛い女の子に変えてあげたんだから、
 もっと、女の子の快楽に身を任せなさい?』

『あぁんっ!はい……、キャロ様ぁ、エリオはキャロ様のメス奴隷ですぅ…』


「(なんや、あれエリオか?髪が長くなって、胸も膨らんでるけど…
  それにキャロ、あの子があんな女王様みたいに…)」


『あぁっ!スバルの中、キモチイイ!あぉぉっ!またでるぅぅ』
『あぁぁんっ!ティア、ティア、ティアァァァッ!!』


「(ティアナ!?一体何してるんや!まるで盛りのついた男の子みたいに…
  それにあれスバルか?髪が長くなって、ギンガみたいやけど…)」


『我がムチの味はどうだ!ヴィータ!!お前のようなメス豚には
 我が剣はもったいない。ムチで十分だ!!』

『あえっぁぁ!!いい、ムチ、気持ち良い!!シグナム様ぁ
 この卑しいメス豚ヴィータをもっと、もっとぶって下さいぃぃ!』


「(やめぇ、二人とも何してんるや!!そんなアブノーマルな事したらあかん!
  何なんや、何なんや、これぇ!こんな悪夢、もう見たくない!!)」




その奥に男が悠然と座っていた。
防衛長官として、機動六課を目の仇にしていた、あの男が。
彼の足元には二人の女性の姿。
はやての親友でもある、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン。
しかし、今の二人は彼女が知っている二人とはまるで別人に見えた。

一言で言えば娼婦。

二人はその豊かな乳房で両側から挟みこむように、男に性的な奉仕を行っている。
蕩けた表情で、淫らにくねりながら。

『ご主人様、どうですかぁ?なのはのおっぱいは?』
『あぁんもう、なのはばかりずるい!私の方がおっぱい大きいんだから!
 あはぁ、ご主人様の熱いペニスと、なのはの乳首、どちらも感じるぅ」


「(なのはちゃん、フェイトちゃん…、二人してあんな事…)」

男は悠然とはやてを見下ろし、声を発した。

『目が覚めたかな?八神はやて二佐。
 君の為に用意したステージ、楽しんでもらえたかな?』
「…………」
『嬉しすぎて声も出ないか。ついでにコレも見てくれたまえ』


男が指を鳴らすと、上方にあるモニターに淫靡な光景が映し出される。
一人の女性が無表情な男性の上に跨り、激しく乱れていた。

『ウフフッ、ザフィーラ。貴方はもう私の人形。
 このままオブジェとなって、私が動いて欲しい時だけ動くお人形になるの』

『…………』



「シャマル、ザフィーラまで……、もう皆、やられてしもうたんか…」

『その通り。そして君以外の六課の人員は全て、私の支配下にある。
 残るは君一人だけだ。寂しいだろう?』
「………ん、………さへん」
『ん?何かな?』
「……許さへん!お前だけは絶対にゆるさへん!!」

はやては目の前の男を強い眼差しで睨みつける。
彼女の生涯において、ここまで激昂したのは初めての事だった。

『良い瞳だ、激しい憎しみに我を忘れる、怒りの瞳。
 普段、飄々としている君のそんな姿が見られただけでも
 このステージを用意した意味があるというものだ』
「…その男の皮を被っとる、お前は一体何者なんや!?
 こないな事、私の知っとる防衛長官やったら出来る訳ない!」


目の前の男が笑う。
その歪んだ相貌と共に漆黒の闇が滲み出し、
ウゾウゾ…と不気味な音を立てた。

『その通り。この男は所詮、私の仮の体に過ぎぬ。
 ……夜天の書のレプリカ。あれを通して私はこの次元へと転移した。
 君の予想している通り、本来私がいたのはあの日に滅びた原書の方だ』

こんな化け物が、夜天の書に潜んでいたとは…
それに…、彼女が本当に会いたいのは、
こんな得体の知れない存在ではないのだ。


「…皮肉やな、本当に帰ってきて欲しい子には、もう二度と会えへんのに」

『フフッ、過去の思い出に耽る君はとても美しい。
 そして、心が美しいばかりか、その容姿も極上だ。
 八神はやて、君は自らの姿をどう捉えているのかな?』


そういって『彼』が指をならすと、はやてのバリアジャケットが解除され、
彼女の美しい全裸が晒される。
少し小ぶりな乳房、スレンダーなボディ。
なのはの健康美、フェイトの豊満さに比べれば、
少し控えめなその体は、ともすればスレンダーな魅力に溢れている。

「ひっ!?やめぇ!人をひん剥いて何するつもりや!!」
『君の美しさを再確認して欲しいと思ってね、
 私は美しい者が大好きだ、故にこの者達も手に入れさせてもらったよ』


そういうと『彼』は無心に奉仕を続けている
なのはとフェイトの頭を愛おしそうに撫でる。

『あぁんっ、ご主人様…』
『嬉しいです、ご主人様…』


心を支配された『彼』のシモベたちはウットリとしながら、
更に奉仕に熱を入れ続ける。

「……違うやろ、お前が好きなのは『壊す』ことや!
 そこにいる二人も、周りにいる皆も…お前に壊されたんや!」

『その回答は間違いだ。
 ただ壊すだけの洗脳など、何が面白い?
 優美だった者が!雄々しかった者が!正しき者が!
 その全てが忘我の悦楽に身を任せ、私の色に染まる事が楽しいのだ!』
「同じことや!こないな……、こないなこと、皆が可哀想や!」
『いや、彼女達は幸せだよ。見てみるがいい。
 この場にいる者達の表情を。誰が悲しんでいるように見える?』


快楽に喜びの声を上げる者。
心の闇を開放され、鬱屈した感情に身を任せる者。
皆が一様に、恍惚と愉悦の狭間で多幸感を感じながら、堕落している。

「ちがう…、…こないな……違う!!」
『フフッ、ここは君達の夢想の終着点だ。諦めたまえ』
「…っ!!…終わらへん!うちらの夢はこんなところで終わらへん!
 こんなモノが終着点であって良いはずないんや!!」

『そう、夢から覚めた後も、ここは悪夢(ゆめ)の中、終わりは無い。
 それにある意味、君の言う事は正しい』
「!?」
『ここは始まりなのだよ。全てのね!
 なのは、フェイト。私の新たな体となる彼女に奉仕してやってくれ』
『はい、ご主人様』
『ご主人様の仰せのままに』


そういうと、なのはとフェイトが淫らに微笑みながらゆっくりと近づいてくる。
黒いボンデージ風装飾にスリングショット水着、唇には青紫のルージュ。
腹部には妖しく輝くベルカ式魔法陣。
輝きの宿らぬ瞳は共に赤色、狐に憑りつかれたかのように淫靡につりあがり、
両者共に髪を下ろして、淫らなロングヘアーになっている。

「やめるんや!なのはちゃん、フェイトちゃん!」
『はやてちゃん、新たなるご主人様の体』

『はやて、新たなるご主人様の体』



二人はそういうと、ガッチリと両側からはやてを拘束する。
そして、なのはは右乳首、フェイトは左乳首に舌を這わせ始めた。
チュピィ、チュゥ…、チュルゥ……
チュピィ、チュゥ…、チュルゥ……

「あぁっ!んんぁ、やめぇ…、やめる…んや……」

両側の乳首を執拗に舐められ、咥えられる。

『チュパァ…ん、はやての乳首、おいしい…』
『うふふ、はやてちゃん、乳首が勃起してきたねぇ、
 感じてきてるのかなぁ?』
「そ、そない…こと…、あらへん…、私はそっちの趣味あらへん…
 !?ひぃぁぁぁぁっ!!」


その瞬間、二人が同時に乳首を甘噛みする。
程よい刺激がパルスのように走り、全身で木霊のように反響すると、
そのまま甘い痺れに変化していく。
この場の空気に呑まれてしまったのだろうか?
はやても妙な気分になってきた。

「(あかん…、このまま、ペースに乗せられたら、本当に…んんっ!!)」

その瞬間、なのはがはやての唇を奪った。
そのまま舌がはやての舌裏に差し入れられ、チロチロとくすぐられると
こんどはネットリと絡められて、舌全体を弄ばれる。
チュゥッ、チュゥゥ…、れろぉ、れろ、れろ、れろ、んぁ…
しばらく口内遊戯を続けらると、今度は舌の先端をリズミカルに転がされ……
レロ、レロレロレロ……チュゥ、チュゥゥゥ……!!
口内でなのはの唾液と自分の唾液が混じりあい、
口の中の占有権が全て奪われてしまったかのような錯覚を覚える。

「(あぁぁっ、なのはちゃん、だめやぁ…、
  なんて、えっちな舌づかい…あっっ!)」


今度はフェイトが陰部への奉仕を始めた。
なのはに口内奉仕をされているうちに、フェイトが自分の太ももをつかみ、
股を開かせるのをはやては感覚として感じ取っていた。

「(だめや、そこはだめぇぇぇぇ!)」

フェイトの舌がヴァギナを掬い取り、焦らすように刺激してくる。
なのはに唇を奪われ続けているはやてに、フェイトの様子は見えないが
妖艶な表情で、上目遣いに陰部を刺激している姿は容易に想像できた。

そのまま、フェイトの舌がクリトリスに移動すると、
しばらく舌の先端でクリクリと舐めとる。
更に
チュッとクリトリスの先端にキスをすると、
今度は唇をすぼませて、一気に吸い上げる。

ジュルゥッ!ジュルルルゥゥゥゥゥゥッッ!!

「!?ひぁぁぁぁぁぁぁっ!!んはぁっ、んんっ!んん〜〜〜〜〜」

ビクゥッ!ビクッ!ビクンッ……


思わず大声を上げてしまうくらいの強烈な刺激に、
そのまま一回目の絶頂を迎えてしまった。
しかし、その嬌声はなのはの唇によって塞がれた。
そして、終わる事無い執拗なまでの二人の愛撫は続いていく。

「あへぁぁ……、ふたりとも、かんにんや、もう、かんにんやぁ…、
 このままじゃ、わたし、本当におかしぃ……んはぁぁはっ!!」


二人は聞く耳を持たず、魂の宿らぬ瞳で愛撫を続ける。
愛情は感じられない、まるで機械のようなそれは…
本来ならば、恐怖感を感じ取りそうなものだが、
今のはやてには甘美な感覚に思えて…
心が奪われ始めているの実感した。

「(あかん…、あかんよぉ…、わたしぃ、
  このままずっと…、こうしていたら…もう……)」


耳からは相変わらず、他のメンバーの喘ぎ声が聞こえていた。
皆気持ち良さそうに、甘い声を上げている。
この場で正気なのは自分だけ。
自分という存在が間違っているような気さえしてくる程、
この空間は異様な空気で包まれていた。


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