3 改竄「かいざん」

その瞬間、いくつかの記憶がフィードバックしてくる。
それはあの時、あの瞬間。10年前の冬のあの日。

「う、嘘……違う……ちがう!!そんなはずは……」
『なのは……、それが真実の記憶だよ。
 あの時、なのは は私を助けようとして……』



海上での闇の書の意思との激闘。
その途中、フェイトは闇の書の中に閉じ込められた。
なのは は外部からフェイトを助けるために、一人闇の書の意思と戦いを繰り広げた。
そう記憶していた。それは間違いの無い真実の筈だった。
だが……

『(あの時、私は…、いや、わたしたちはもう『彼』と出会っていたんだ。
  そうだ…、わたしもあの時、フェイトちゃんと同じように吸収されて……
  そして種を埋め込まれていたんだ)』


意識が飛翔し、過去の光景があたかも
目の前で展開されているかのように視認される。

『収穫の時期は時の向こう側にある。
 その時まで、この種は君達の中で眠り続ける』

『はい……、ご主人様』

『はい……、ご主人様』


黒いボンデージ風のグローブ、ブーツ。
スリングショット風の紐状水着。
肘を上げて腋を見せ、両手を後ろで組み、膨らみかけの胸を前に反らして…
両膝をつきながら股を開き…、小さな なのはとフェイトは恍惚とした表情で答えている。


…我らが主、ご主人様に忠誠を


『(そんな…、私達、あんな恥ずかしい格好で…
  それにあの表情…、あれが本当に私達なの??
  ……もう、全てがあの時から、決まっていたというの?)』


そう、全ては10年前から決まっていること。

『(そう…だよね、だってフェイトちゃんが
  あっさりと精神支配なんてされる訳が無い。
  マインドコントロールで簡単に操られちゃう程度なら、
  とても執務官や戦技教導官は勤まらない)』


そう、自分達が簡単に操られる訳がない。でも…

『(でも…、でも…
  初めから受け皿が出来ていたのなら……それは抗えない……)』


そう、抗うことなど出来ない。

なのはの瞳が虚ろになっていく。
『そう』あることが自然に思えてくる。
それに伴って…、心は更に幻視の空間に囚われていく。

目の前に展開される光景、それは『彼』の前に跪く10年前のなのはの姿。
素直さと健気な愛らしさが魅力的だった美しい少女。
しかし、眼前の少女は淫靡なコスチュームに身を包み、
幼さに似合わない口元のルージュが、その健康的な可愛らしさを
妖しく誘う妖花のような印象に変えてしまっている。

輝きが宿らない瞳に半開きの唇。
虚ろな微笑み。

そんな10年前の自分を…
その場に居合わせるはずのない、現在の大人の自分が見つめている空間。
なのはの心が少女の時代に帰っていく。
自然と…、なのはの表情が少女のなのはの表情とシンクロし始める。

輝きが宿らない瞳に半開きの唇。
虚ろな微笑み。

大人のなのはにも、少女のなのはと同じ蕩けた笑みが浮び始める。
シンクロする。10年前とシンクロする。

………

現実空間において幻を見続けているなのはの姿は
虚空の一点を見つめ続け…、その姿は夢遊病患者の様相を呈していた。

『彼女は素敵な夢を見ているのだよ。
 ありもしない10年前の虚像をね。そして彼女は一つになっていくのだ。
 私に染められた淫らな少女の自分とね』
『あぁ、なのは可愛い…、昔のなのはみたい』
『フフッ、フェイト。もう少しで、更に面白いものが見れるぞ』


何も見ていないかのような瞳で、大人のなのはは虚空を見つめ続ける。
瞳の奥には幻視の世界、虚像の過去が広がっている…

………

『なのは、私のシモベとなった君に褒美をあげよう。
 君は『オナニー』を知っているかな?』
『おな…にー?ご主人様、オナニーって何?』
『とっても気持ち良くて、頭が真っ白になるモノのことだ』
『気持ちよく……、すてきなの…!
 わたし、オナニー知りたいです!
 どうすれば、オナニーできるのですか?』


少女のなのはは無垢な面持ちで、無邪気に彼に尋ねている。
その愛らしい口調が、シンクロしている大人のなのはの口からも発せられ始める。
子供の頃に比べれば、幾分低くなり落ち着いた声。
しかし、口調は少女そのものであり、それがアンバランスなギャップを醸し出す。

………

『さぁ、始まるぞ…』

彼がニヤリと呟くと同時に、なのはの呟きが現実空間に奏でられる。

「おな…にー?ご主人様、オナニーって何?」

「気持ちよく……、すてきなの…!
 わたし、オナニー知りたいです!
 どうすれば、オナニーできるのですか?」


少女の口調、愛らしい仕草。
管理局陸士部隊の制服とは相反する子供の様な無垢な姿が
クリスタルゲージの中で展開されている。
その様子にフェイトは劣情が抑えられなくなっていた。
虚ろな瞳で少女になりきっているなのはの姿に堪らなく興奮している。

『あぁぁ、素敵ぃ、なのはっ…、あんっ、可愛い!んっ……、
 あぁっ、今すぐ抱きしめたい…、あぁぁん』


スリングショット水着を陰部に食い込ませながら、
無垢な存在と化したなのはを眺め、淫らな指使いを局部に走らせている。

『まぁ、そう急ぐこともあるまい。
 なのはを君が抱けるようになるのも、そう遠い未来ではない。
 まずは管理局の英雄殿の痴態、じっくり観察しようじゃないか』
『うふふっ、楽しみです…、
 さぁ、なのは、もっと可愛らしい姿を私達に見せて……』


なのはのバインドが解かれる。すると……

………

『まずは腰を床に下ろして、楽な姿勢をとるんだ』
『はい、まずは楽な姿勢を…』

小さななのはが彼に言われるまま、床にペタンと座る。
すると大人のなのはも、まるで自分が言われているように同じ姿勢をとり
ペタンと座った。その動作は完全にシンクロしている。

『そのまま、股を開いて大事なところに指を這わせるんだ』
『!?ご主人様、ここは…、その…、おしっこをするところです。
 わたし…、恥ずかしい…よぉ…』

『その恥ずかしさが良いのだよ、なのは。
 さぁ、私が見ている前でオナニーを始めなさい』
『はい……、おなにー、はじめます……』

………

「!?ご主人様、ここは…、その…、おしっこをするところです。
 わたし…、恥ずかしい…よぉ…」


「はい……、おなにー、はじめます……」


クリスタルゲージの中で、なのははゆっくりと股を開き
下着の上から、つたない動きで指を這わせ始めた。
頼もしい六課のエース、頼れる英雄、それが現在の彼女だったはず。
しかし、囚われの籠の中にいる、目の前の彼女は正に…
無垢な少女そのままだった。

さわ…、さわ…、さわ…
指がぎこちない。
まるで初めてオナニーをするかのような不安そうな動き。

実を言うと、なのはがオナニーをするのはこれが初めてではない。
もちろん、そんなに数をこなしている訳ではないが、
20歳近くにもなれば、誰しも経験していることだ。

だが、今の彼女の精神は10年前の幼い少女の心。
性的な事に全く無知な、初心な少女へと心が帰っているのだ。

しばらく指を這わせているうちに下着が濡れはじめ……
ピンク色の清潔なショーツの上に、淫らなシミが浮かび上がってくる…

………

「ご、ご主人様、んあっ、なんですんかぁ…、これぇ
 わたしの…おしっこ…がぁ、こんなトロッとしてぇ…
 んぁ……、病気なのかなぁ……」

『フフッ、なのは。それは『愛液』というんだよ。
 病気ではないから安心したまえ、
 君が気持ち良くなってきている証拠なのだから』
『んっ……、びょうきじゃない…、よかった……
 んんっ!はぁぁ…、でも、ほんとうに…すてきな…かんじなの…』

『さぁ、今度は指を入れて楽しむといい、もっと気持ち良くなるぞ』
『はい……、ゆびをいれてみます……』

………

「はい……、ゆびをいれてみます……」

水晶の檻の中で大人のなのは はクイッとショーツをずらし、
陰部へと指を差し込み始めた。
完全なるシンクロ、もう彼女の心は小さな少女そのものだった。

差し込まれた指は一本、人差し指のみ。
確かに少女になりきっている今のなのはには
自分の大切な所も、スジのような狭い割れ目に見えているのだろう。
もちろん、大人である今の彼女の陰部には、
既に男のモノを受け入れるだけの余裕があるのだが……

クチュッ、クチュッ、クチュッ、クチュッ……
淫らな水音がなのはの指から奏でられる。
表情は弛んだ虚ろな笑み。唇からは吐息が漏れ続け、
『はじめてのおなにー』を楽しんでいる。

「あぁっ、きもちいい……、んっ…、おなにー…、きもちいい…」
『なのは…、普通は初めてで、こんなに感じないんだよ。
 君はとてもエッチな悪い子だなぁ』
「あぁっ!あぁっ!あぁっ!あぁっ!あぁっ!……
 ごめんなさい…、えっちでぇ…ごめんなさい……ご主人様ぁ…
 わたしを……えっちな…なのはを…きらいにならないでぇ!!」

『私が君を嫌う訳がないだろう?
 安心して、オナニーを楽しむといい』
「あぁっ、よかった……、ご主人様、だい…好き…
 もっと、おなにー…するの…」


初めて憧れの人とデートをしているかのような甘酸っぱい表情を見せながら…
しかし、その瞳にも輝きは宿っていない。
身も心も、幻の上でなのは は踊り続ける。

オナニーに夢中になっている。
ただただ、無垢な堕落と共にオナニーの虜になっていく。
しばらくすると、彼女の指を差し込むリズムが早くなってきた。

「あぁ、ご主人様ぁ…、んはぁっ!あぁっ!
 何か…、なにかきちゃいますぅぅっ!!」

『(全てが始めての感覚だと錯覚しているのだ、絶頂を迎えるのも早いか…
  ククッ、管理局最強の英雄殿も、こうなれば可愛いものだな)』
「なんですか、これ、なんですかぁっ!」
『もっとも気持ちが良くなる瞬間が迫っているんだ。
 君はもう『イキそう』なんだよ』
「…イキそう、なのはぁ…んんっ、んぁぁ!もうイキそうなのぉ!!』
『さぁ、イキたまえ、なのは!』
「いくっいくぅ!なのはぁ、いっちゃうぅぅぅぅ!」

「いくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

ビクゥゥゥゥゥッ!!ビクッビクッ!ビクッ………


「あぁぁぁ……、ごしゅじんさま……、だいすき………」



感じすぎて、めちゃくちゃ……
蕩けた虚ろな笑みを浮かべながら、なのははグッタリと床に倒れこんだ…





………

闇の中。小さな少女のなのはが沈んでいる。
心地よい闇。気持ちよくて、全てが蕩けていく。
もうなんでもいい、ずっと、このまま…、こうしていたい……

『………マ!ママ!しっかりして!!』

誰かがママと叫んでいる。
誰を呼んでいるのだろう、それは酷く悲しい叫び声に聞こえた。

『(どうして、そんなに悲しんでいるの?)』
『ママ!なのはママ!!闇に負けないで!』
『(なのは…ママ?
  何を言っているの?なのははまだ9歳だよ?
  ママじゃないよ……)』


暗闇の中に光が走り…
その光の中に少女が浮かび出される。
年の頃は、今の小さな なのはよりも更に年下に見えるが…
左右の色違いの愛らしい瞳にいっぱいの涙を溜めて
その少女が叫んでいる。

『忘れちゃいやだよ!ママ!ヴィヴィオを忘れないで!』

ヴィ…ヴィ…オ?
誰だっけ、………ヴィヴィ……オ…?
……ヴィヴィオ……


ヴィヴィオ!!



………

『彼』はゆっくりとクリスタルゲージの中で倒れこんでいる
なのはへと近づいていく。完全なる勝利を確信しながら。

『さぁ、なのは。これで君はもう私のものだ。
 あとは闇を注入すれば、君も私の愛しいデバイスとなる……
 !?…何!!』


水晶の檻の中で凄まじい程の魔力が渦巻いている。
そのピンク色の魔力光の中で、彼女は目覚めていた。

「…忘れる訳なんてないよ…、ヴィヴィオ。
 ありがとう…、もう少しでママ、闇に負けるところだった。
 でも、もう大丈夫!なのはママは絶対に負けないから!」


その叫びと共にクリスタルゲージが弾け飛び、中心に爆発が発生する!
『彼』は素早く転移で後ろに引き戻り、辛うじて回避、
フェイトも素早く移動し、『彼』を守るようにバルディッシュを構えた。

『ご無事ですか!?ご主人様!』
『あぁ、何とかね。しかし、素晴らしい!
 あの状況から、ここまで持ち直すか!』


爆炎の向こう、その揺らめく炎を背にして彼女が立っている。
輝きのある生気の戻った瞳、ピンク色の聖なる魔力光。


エース・オブ・エース 高町なのはの復活だった。


そのまま、彼女の鋭い眼差しが『彼』をキッと睨みつける。

『流石は不屈の英雄殿だ、やはり小手先程度の洗脳では
 君を律するのは無理ということか!!』
「例え…どんな事が過去にあったとしても、
 私が貴方に出会っていたとしても!!
 私は負けるわけにはいかないの!ここで貴方を倒して、私は帰る!
 ヴィヴィオが待っている場所へ!」

『!?』


一瞬『彼』は無表情でなのはを見つめた。
しかし、その表情はすぐに歪んだ笑みへと変わる。

『……ククッ……ハハハ……そうか!
 アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!』
「何が可笑しいの!!?」

頼もしいまでのなのはの宣告に対し、
『彼』はなぜか笑い続けている。まるで勝利を確信したかのように。

『ククッ、いや、何ねぇ。
 フェイト、君は下がっていたまえ』
『!?ご主人様、ダメです!
 レイジングハートをこちらが所持しているとはいえ、
 なのはの強さは別のところにあるのです!
 ずっと一緒だったから分かる…、このままだと、ご主人様は…』

『大丈夫だ。君は私が負けると、そう思っているのかね?』
『ッ!分かりました、ご主人様……』

『彼』は心配そうなフェイトの前に立ち、悠然と構えた。 
漆黒の闇が滲み出て、黒の障壁が不気味な音を立てて展開される。

『さぁ、ダンスタイムの始まりだ。一緒に踊ってくれるかな?
 高町なのは一等空尉!』
「……貴方みたいな人でも、自分の部下は大切にするんだね。
 ありがとう、これでフェイトちゃんを巻き込まなくてすむ」

『勘違いしないでもらいたい、彼女は部下ではない。
 私のデバイスだよ。そして、この勝負、彼女を出すまでもない』
「私にレイジングハートがないから、手加減のつもりかな?」
『それは関係ない。君は既に私に支配されているからだよ。
 君も見ただろう?10年前のあの日々を!』
「!!私は……それが『真実』だとしても、
 貴方のものには……ならない!!」

『アハハハ!やはりな!!
 この勝負、私の勝ちだな、高町なのは!!
 君は気づいていない!
 今自らが発した言葉こそ、君自身の未来を暗示していることに!!
 そう……全てはもう決まっている事なのだ!!』


その言葉と共に、独特のスタイルで『彼』は構える。
それと同時になのはも体内の魔力を一気に上昇させる!

『さぁ、君を終わらせてあげよう!高町なのは!!』
「私は負けられない!!…フェイトちゃん、ヴィヴィオ、私はぁ!!」

両者同時のタイミングで突進!
『彼』が転移と共に漆黒の残滓を棚引かせ、その黒い右腕を突き出す!
なのはもピンク色の魔法光の残滓と共に左手を突き出した!

お互いの攻撃が交錯し、強烈な魔力の閃光が走りぬけた。
その勝負の行方は……



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