1 栞 「しおり」

薄い燐光が怪しく揺れる拘置所の一室。
そこに『彼』は悠然と座している。
本来ならば、そこは次元犯罪者が収容される独居房であり、
哀れな囚人達が罪を償うために、その身を拘束されるはずの場所だ。
しかし…
『彼』は罪を償うために、この場所にいるのではなかった。

『フェイト執務官、任務ご苦労だった』
「!!申し訳ありません、ご主人様!
 任務とはいえ、あのような辱めをご主人様に…」


フェイトは心の底から畏まり、片膝をついて謝罪を繰り返した。

数日前に現防衛長官が殺人罪で逮捕されるという事件は、
マスコミにも大々的に報じられた。
現防衛長官を逮捕したのは、本局執務官フェイト・T・ハラオウン。
世間には再び機動六課の関係者の活躍によって、世間の裏にある闇が裁かれたと
そう映ったことだろう。

本来ならば逮捕した執務官と、逮捕された犯罪者。
尋問する側とされる側の立場のはず。
しかし、この場に展開されている光景は全くの間逆。
法の番人である制服姿の執務官が囚人に対して、
まるで王に仕える臣下のように振舞うその姿は…
間違いなく異様な光景だった。

『よい、私が君に頼んだことだ。それに君達機動六課を欺くには
 一度逮捕されておいた方が良いと思ってね』

「私には辛い任務でした。
 愛しいご主人様を演技とはいえ辱めてしまうなんて……、
 お願いです、ご主人様。罪深いフェイトに罰をお与え下さい」


跪き、仕置きを望むフェイト。
しかし『彼』は見逃さなかった。
彼女が仕置きを『期待』していることに。
上気した頬、吐息の漏れる唇…、それらが如実に物語っている。

『いいだろう、フェイト。では君に罰を与えよう。
 私に奉仕をしてくれたまえ』

『はい、ご主人様…』


そう言うとフェイトはフラフラと立ち上がり、
『彼』の元に引き寄せられていく。

そのまま、数歩歩くと執務官の制服が青紫色の発光と共に、
黒いエナメルボンデージ風のロンググローブ、ロングブーツ、
そして黒い紐状のスリングショット風水着に変化する。
その瞳は虚ろ、罰を受けるという発言とは裏腹に
口元には淫靡な笑みが浮んでいる。

そして『彼』の膝の前に跪くと、ズボンの中からペニスを取り出し、
チュッ…とキスをした。

『ご奉仕致します、ご主人様…』

そのまま、ヌラリと光る青紫のルージュに彩られた唇が
亀頭へのキスを繰り返し始める。
チュッ、チュッ、チュゥ…、チュゥ……
さらに舌を突き出し、尿道の先端へと舌を這わせる。

『うふぅ……、はぁ……れろぉ、…どうですか??ご主人様』
『フフッ……それは聞かなくても分かるだろう??
 君が完全に私の物となった今、私の五感は君と共にある』

『はい…、分かります…、これがフェラチオの感覚…
 あぉぉっ、あっ、あっ、すごいぃ』


ペニスをその柔らかな舌と唇、口内で包まれる感覚。
初心なモノなら、ものの数分と持たない極上の感触が
感覚のリンクによって、フェイトの下腹部を翻弄し始める。
女性に存在しないはずのペニスの感覚が、淫靡な喜びとなって
女であるはずの彼女にオスを教え込んでいくのだ。

『その乳房も使ってみたらどうだ?』
『はい……私のおっぱいで…、はさみます……』


そう言うと、今度は豊満なその乳房で彼の剛直を挟み込む。

『あぁん!私のおっぱい…。柔らかくて……気持ちいい……』

感覚の全てを喜びに。
唇で吸いつき、耳が喜ぶようにキスの音を響かせる。
チュッ、チュッ、チュゥッ、チュゥッ……
豊満な双乳で主の肉棒を挟みこみ、触覚が喜ぶように
淫猥な舌使いで奉仕に熱を入れる。
んぉ、んっ、んっ、んっ、れろぉ、ふぉ…、れろぉ、れろぉ…
全てが喜びになる。
これが男の逞しい物、ペニスの感覚。

『あぁぉ、オチンチン凄い…、男の子の感覚…素敵ぃ……
 ペニス……の感覚、これ……癖になっちゃいます』
『フフッ、メスである君に、オスの悦楽を与える罰の予定だったが、
 仕置きにならなかったようだな』

『あぉぉっ、おぉっ、ご主人様…、申し訳ありません…』
『よい、初めから私は君を許すと言っている。
 それよりも、肉棒をその淫らな体で奉仕される感覚は最高だろう?』

『はい…最高です……』


そういって股をモゾモゾとさせる。
フェイトの感覚は今、主の感覚と完全に繋がっていた。
彼女の奉仕はそのまま、彼女自身に何倍にもなって返ってくるのだ。
今のフェイトには肉竿は備わっていない。
しかし、その感覚はペニスが備わったのと同じ快楽を感じ、
こみ上げるマグマのような射精感も感じているのだ。

『ああぁっ、出そう…!!ご主人様、イキそうなのですか??』
『あぁ、そろそろだ』
『はい…、お口で受け止めますね……んん…ほふちも……ひゃわら…かひ
 ……ひゃふて……くらぁはぁいひぃ……』


青紫のルージュで彩られた唇を輪のようにして亀頭をくわえて扱き、
舌も絡みつかせてピッチを上げる。
んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んっ……
奉仕をしているはずなのに、下腹部に感じる快楽は、口で肉棒に奉仕される
柔らかで滑りながら絡みつく感覚。

フェイトはフェラチオの気持ち良さを自らの下腹部で感じ取る。
射精感を飛翔させるために、どう奉仕すれば良いのか。
自分の急所を探り当てるように…、その口内奉仕に熱がこもり、
主が感じれば感じるほど、フェイト自身も射精直前の悦楽を享受する。

『れ……る……れる…ろぉぉ……んん!!んんんんっっっ!!』
ビュクッ!!ビュッ!!ビュゥルルルル!!!


白濁が口内に注ぎ込まれる。

『はぁぁぁん…………』

注がれ征服される感覚、注ぎ征服する感覚。
相反する二つの感情が心を同時に満たしていく。
ご主人様に自分の全てを支配された倒錯感。
口内射精による征服感と充足感。
その両方の感覚に、奴隷デバイスは熱い吐息を漏らした。

与えられる全ての感覚は、淫らなシモベと化した今のフェイトを
更なる忠実なシモベへと堕落させる、闇への片道切符。
それは、もはや後戻りができないレベルまで彼女を染め上げていくのだ…

『フェイト、我が仕置きの味は如何だったかな?』
『はい……、とても……素敵でした……、
 懺悔…致します、ご主人様、フェイトをお許し下さい』


身も心も満たされる多幸感に身を委ねながら。
淫猥なシモベが言葉とは裏腹のウットリとした表情で答えた。
その懺悔を『彼』は満足そうに歪んだ笑みで受け入れる。

『その罪を赦そう。さぁ、また一働きしてもらうぞ』
『…はい、お任せ下さい。全てはご主人様のために……』


淫らに微笑むフェイト。その心は完全に『彼』に支配されているのだった。




『では状況を再確認しよう』
『はい、現在の状況ですが…、
 六課の人員80%はすでに掌握しつつあります』


ここ数週間で状況は進行しつつある。
六課の女性陣はフェイトの手引きにより『彼』と邂逅し、
次々と精神を支配されていった。
そして支配された女性陣が男性陣を篭絡し、さらに精神を支配する。
その連鎖はミッドチルダを救った英雄部隊を闇の尖兵へと変貌させていた。

『普段は支配前の精神状態でいるように設定していますので、
 表向きは以前と変わりませんが……』
『だが一度でも私の支配下に置かれた者達は、
 命令一つで何時でも忠実なシモベとしての自分を思い出す。
 盤上の駒の色が一瞬で私の色に染まる日が待ち遠しい』

『えぇ、私もご主人様のお力として、
 バルディッシュを振るう日を想像するだけで、身が引き締まる思いです』


露出度が高い黒のバリアジャケット。
『彼』に支配された女性は全て同じデザインの戦闘服に身を包む。
その支配の象徴ともいえるバリアジャケットに抱かれ、
フェイトは誇らしげに戦意高揚を告げる。

『フフッ、そうか。ならばそろそろ…
 将を射るに最大の一手を打たなければなるまい』

『それでは……』
『あぁ、待たせたな。
 六課最強の英雄殿を我等の陣営に迎え入れようではないか!』

『はい!!あぁ、ついに……』
『そうだ。高町なのは一等空尉、
 エース・オブ・エースを我等のシモベに堕とす』



そう、現実的な問題として、六課掌握の最大の障壁となるのは
間違いなく高町なのはだろう。
戦闘力的には拮抗しつつも、精神的につけ入るスキのあるフェイトと違い
彼女は全てにおいて要塞ともいうべき難攻不落の存在といえる。

そのような存在の精神を掌握するのに、普通のやり方では通用しない。
重要局面にて正気にでも戻られようものなら、かつての先人達が辿った
哀れな結末と同様の未来を迎えてしまうことだろう。

そのような存在を手中に収めるには…
非合法の中でも、特に非合法な手段を取るしかない。
異世界の記憶の中でも、特に特殊な一つの方法を。


『彼』は復讐者であったが、同時に遊び好きな一面もある。
フェイトを篭絡する際にも、わざと回りくどい手段を取った。
それも遊びの要素が欲しかったからだ。

故に『この手段』自体はあまり好きではない。
元の術者の使用方法は、スマートすぎて遊びの要素が存在しなかったから、である。

『(気がついたら、守るべき仲間の常識が改竄されており、
  悪意もなく、いつのまにか敵になっているという状況か…
  悪くはない。しかし、私ならもっと楽しいショーを演出するがね、クククッ)』


『彼』の思い描くシナリオは、かの術者とは違う方向のようだ。
そして、右手の漆黒より、ズルリと棒状の物が抜き出される。

『フェイト、君にはこれをやろう』

『彼』が差し出したのは刀のような形状のモノだ。
だが、異様な雰囲気を醸し出している。

『これは?』
『対高町なのは用の武装だよ。
 これは君達の世界とは違う並行世界から得た知識だが…
 かの世界には強力な手段を扱う者もいる』

『どのような効果なのですか?』
『効果か…、ならばフェイト、一つ問おう。
 君が私と初めて出会ったのは何時だったかな?』

『…出会いは10年前、私が母プレシアの命をうけ、
 ジュエルシードを探していた時です』
『そして、君との関係は?』
『はい、あの残酷な母を殺し、地獄より救って下さったご主人様に
 フェイトは10年間片時も離れずお仕えしてきました』


『彼』がニヤリと笑った。
予想通りの答えが返ってきたことに満足する。
フェイトとの出会いはそんな昔の事ではない。
そしてそんな過去は存在しないはずなのだが…
彼女は疑うこと無くそれを信じている。
効果は上々のようだった。

『……つまり。これには、そういう効果があるのだよ』
『!?あ…あれ?私、今……』
『対象者の過去にありもしない記憶、
 そう、自分という存在を 『挟み込む』 のだそうだ』

『凄い効果です…、
 自分の記憶が別の物にすり替えられているなんて全く気づきませんでした。
 これで、なのはにご主人様という存在を挟み込めば…』
『そこが綻びとなるだろう。
 フェイト、君ならばこれを彼女に挟み込むことも可能だろう』

『お任せ下さい、ご主人様!そして、なのはも私達の仲間に…フフッ……』


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