■5
闇は暗く、深い。
そこでキャロは奔流のように何かが送り込まれる感覚に、
もはや何も考えられなくなっていた。
次第にそれは心地よい気分へと変化していく。
妙に安らいだ、すべてを他人に委ねてしまったような不思議な安息感。
「(あ……あぁ……
なんだか、とても深いところにいる…みたい……)」
「(でも…気持ちいい…
気持ちよくて、ふわふわになる……)」
「(ふかくて……きもち、いい……きもち……ぃ……)」
その心のまま、キャロは闇に全てを委ねた。
心の赴くまま繰り返す破壊の愉悦。
人を騙し、陥れる謀略の愉悦。
邪悪な思想が少女の心に沁み渡っていく。
禍々しい思想が、キャロの心から正義を、平和を愛する心を奪い去る。
法の守護者としての価値観は完全にキャロから引き剥がされ、
代わりに邪悪な刷り込みが心に吸収されていく。
そして、少女の表情が変わり始める。
『………………』
キャロには似つかわしくない、妖しい笑みが口元に浮かぶ。
『(やっと、見つけた……)』
そして、ついに彼女は得た。
自分の居場所を。
やがて闇が薄れてくる。
細かい痙攣が止まり、荒い呼吸も収まりつつある。
ぴくりと指が動き、身体が力を取り戻し始めた。
「終わったかしら?」
クアットロが首を傾げる。
向けられた視線の先では闇が晴れ、少女の姿が現れた。 |