(魔法少女リリカルなのはStrikerS キャロ・ル・ルシエ)
SS原作 : バーランダー様


■2

時空管理局嘱託自然保護官アシスタントの召喚魔導師として、
キャロ・ル・ルシエは自然保護隊に所属していた。
彼女の仕事は辺境地域の環境や生態を守ること。
動物や植物、自然と共に生きてきたキャロはこの仕事が大好きだった。
だからこそ六課解散後、すぐにこの仕事に戻ったのだった。

それに今は前よりも更に楽しくなった。
自分と共に六課の仲間であり、家族でもあるエリオも同じ部署を希望してくれたのだ。
騎士を目指す彼には他の道こそが相応しかったのに、キャロの為に。
その事に彼女は喜びを感じていた。

だが一方で彼女は気付いていた。
エリオがキャロを守ろうとするのは、彼女を妹のように思っているからであり。
そして―――金髪の執務官の言葉があったからだということ。
(エリオは男の子なんだから―――)
その言葉を少年が胸に深く刻んだ事に少女は気付いていた。
そして、それは彼女が彼に望むものとずれていることにも。
やはり世界は―――すべての望みを叶えてはくれない。

「(でも、いいの。
  今、わたしは幸せだから)」


だが世界の歯車は再び彼女をもてあそぶ。
それは形を取り現れた。
クアットロの名を持って。





その日もキャロは辺境地域スプールスで、自然保護隊の職務に従事していた。
自然と共に多くの時を過ごしたキャロはその素晴らしさ、
そして危険さもよく知っていた。
自然と共に暮らしたことのないのはむしろエリオの方であり、
この世界ではキャロの知識に頼る事の方が多かった。
しかし…

「どうしてだろう?」
この日、この時キャロは完全に森に呑まれていた。
あるはずの場所に道がない。

ありえない事だった。
森は彼女に取ってもはや家の庭も同然だ。
にも関わらず、まるで森が姿を変えたかのようで…
「どうしよう……フリードまでいなくなっちゃったし…」
エリオとは離れて行動していても、幼き頃からの友である白竜だけはいつも一緒だった。
そのフリードの姿すら見失い、少女は今やただ一人。



―――キャロは知らない。
この状況が一人の邪悪な者の手によって作り出されているということを。
そして…その魔手は、すぐそこまで迫っていた。


「!!」
突然、デバイスであるケリュケイオンが警告を発した。
その言葉に少女が反応するより早く、光が彼女を包む。
「(これは―――転送魔法!?)」
認識すると同時に、キャロの姿はこの世界から消え失せた。



―――数日後、キャロ・ル・ルシエ行方不明の報が六課関係者に伝えられた。


■ next scene ■