(魔法少女リリカルなのは ヴィヴィオ)
作:いじはち 様


ミッドチルダを震撼させたJ・S事件から何ヶ月か何日後…
「はぁ…」
高町ヴィヴィオは退屈だった。

家にいても、外に出てから家に帰っても誰もいない、
母親のなのはは何日も経っているのに全く家に帰ってこない。
挙句の果てには母親の仕事場はこの前から
立ち入り禁止になってしまい、母親に会いに行く事もできない。
そんなことが何日か続いてしまい、ヴィヴィオは精神的に参ってしまっていた。
ヴィヴィオはリビングに向かって、コップに入れたオレンジジュースを
ストローですすって飲み干した後にソファーでゆっくり眠ることにした。
オレンジの味はヴィヴィオの心を寂しく、そして切なくさせる。
ヴィヴォは寂しさに泣きそうになる。
寂しい、けれどヴィヴィオは泣かなかった。
あの時母親の手を借りずに立てたのだから、泣かない事だってできる そう思ったのだ。

だが、そんな彼女でも睡魔には勝てはしない。 それは生命の宿命の一つだ。
次第に意識は睡魔に犯されていき、彼女は柔らかいソファの上で眠りに付いた。



月が闇を照らす夜。
何かが頬を触るような感覚を覚えてヴィヴィオは目を開けた。
目の前には寝室の天井が映っていた。
だが、眠りから覚めたというのに腕が動かない。 ましてや足も動けない。
その時ヴィヴィオは異変を本能的に気付いた。 
今彼女はピンク色の魔方陣が敷かれているベッドに縛られながら
『寝かされ』ていたのだ。

「え!?」
ヴィヴィオは驚きを隠せずにいる。
彼女は体を動かすが、両腕両脚をバインドされていて動かない。
しかも服は何も着ておらず、生まれたままの姿なのだ。
『あの人』ならば破れそうな軽いバインドではあるが、
彼女では絶対に破る事はできない。絶望的な状況である。

「ただいま、ヴィヴィオ」
この部屋のドアから聞こえる女性の声。
ヴィヴィオはその声の主を知っている。彼女はその人間の名前を呼んだ。

「たすけてママ! うでとあしが縛られて動けないの!」
ヴィヴィオは必死に叫んだ。 義母である高町なのはの声を精一杯。
そしてなのははヴィヴィオの叫びを聞いてかこの部屋に来た。
だが、彼女の姿はヴィヴィオがいつも見ていたものとは一切違っていた。
体を露出しすぎている衣、黒く艶やかなボンデージのようなバリアジャケット、
体のあちこちに刻まれているライン、そして腹部の魔方陣。
それが今のなのはの姿であった。
もはや以前と同じ部分は長い髪を二つに分けた髪くらいしかない。

「なの…は……ママ?…」
戸惑いを隠せないヴィヴィオをチラッと見下ろし、なのははクスリと笑う。
「ヴィヴィオ、どうかな? ご主人様のプレゼントは」
「な…何言ってるのママ!?」
義母の口から放たれた言葉にヴィヴィオは更に戸惑う。
本当にこの人は『なのはママ』なのか? そんな疑惑が彼女の心の奥底で蠢く。
なのははヴィヴィオの問いかけにも答えずに語り続ける。

「でもね、これはほんの一部 本当のプレゼントはこれからなんだよ」
妖しく微笑みながら舌なめずりするなのは。
そんなママを見るたびにヴィヴィオの中の疑惑は膨らんでいく。
(悪魔……)
ヴィヴィオは『あの時』の言葉を思い出した。
それはヴィヴィオが『ゆりかご』の中で聖王として覚醒する前、
ナンバーズの一人クアットロが彼女に言った言葉。
『本物のママをさらった怖い悪魔』
あの言葉はヴィヴィオとなのはを戦わせるための真っ赤な嘘であったが、
ヴィヴィオの目の前にいるなのはは正に悪魔のようであった。

「怖がらなくていいんだよ?」
なのはは優しくヴィヴィオの額を「いいこいいこ」するように撫でる。
だが、ヴィヴィオはそれを怖がった。
しかし、ヴィヴィオの体は動く事はできない。
そのままなのはの手がヴィヴィオの頭に触れた。

「こんなに怖がって… ママがそんなに怖い?」
なのはは母親の優しい顔を見せる。
だが、ヴィヴィオはそれすら嫌がるように泣き出す。
まるで始めての出会いと良く似ていた。ここにいる互いの『なにか』を除けば。

「泣いていいよ ヴィヴィオの涙は全部消してあげる」
「う…」
「ご主人様から与えられた力で」

なのはは笑顔で魔法を発動させた。
それは『ご主人様』から与えられた一回きりの魔法である。
その魔法によってヴィヴィオは歪な覚醒を迎える事となる。


「あ…あああっ!」
ヴィヴィオの体が熱くなり、体中が暗い虹色の光に包まれていく。
光がヴィヴィオを包んだ瞬間、彼女の体は急激な成長を遂げる。
体の成長が終わると暗い虹色の光はシャボン玉のように弾ける。
光による成長を終えたヴィヴィオの姿は聖王と同じ豊かで美しき体であった。
しかし、聖王の時と同じなのはそこまでの変化と成長したヴィヴィオの体だけだ。

「う…うあぁ……あああっ!!」
熱くなってきている腹部に聖王の魔方陣とベルカ魔方陣が融合されたような魔方陣が
浮かび上がり、体中になのはと同じような呪印のようなものが浮かびあがる。
そして、ボンデージ型のバリアジャケットが装着され、続けて露出度の高い水着のような
ラインが現れた。

「はぁ…んはぁ…… 頭がぼーってするよぉ」
全てが終わる寸前、ヴィヴィオの体中に今までの快感がブスブスと突き刺さる。
甘い声を高らかに上げて、ヴィヴィオは口元に涎を垂らして快感を受ける。
雪崩のように襲い掛かる快感はヴィヴィオの思考を犯し、彼女の心と思考を
書き換えていった。
ヴィヴィオに魔力を送り込むなのはは、生まれ変わっていくヴィヴィオの姿を見て
妖しく微笑んだ。


そして、高町ヴィヴィオは邪悪なる覚醒を迎えた。
黒く光るボンデージ型のバリアジャケット、胸も局部も隠す気のなさそうな衣、
体や顔に刻まれているラインのような呪印、腹部に浮かぶ融合された魔方陣。
金色の長髪には先ほどと同じように青いリボンが左右に二つ付いているが、
表情は艶やかで妖しく、そして邪悪なる笑みを浮かべていた。

「これが私の、ご主人様から与えられた新しいチカラ……」
みなぎる力に酔いしれているのか、ヴィヴィオは右手の指をコキコキ鳴らす。
「お母様、この力を与えていただきありがとうございます」
「ふふ、嬉しいよヴィヴィオ 
でも、『お母様』は慣れないかも…いつもみたいに『ママ』でかまわないからね」

「じゃ、じゃあママで… と、ともかく私、ママとご主人様のためにが、がんばります!」
「期待してるよ、ヴィヴィオ 
ヴィヴィオのチカラは聖王の力とご主人様の力を合わせたものだからね」
「うん!」


その夜、高町ヴィヴィオは『聖』の反対、『邪』なる王『邪王』となった。
彼女は始まりとしてこの部屋を、そしてこの建物を無へと葬り去った。
邪王の力を振るうヴィヴィオを隣で見て、なのはは邪悪に微笑む。
しかし、彼女達にとってこれはほんの挑発に過ぎない。 本番はまだこれからである。

「ヴィヴィオ、行こうか ご主人様の場所へ」
「はい! ママ」
満月の夜を二人は翔ける。 親子二人で空を飛ぶのはお互い初めてだった気がする。
ヴィヴィオはそんな事を考えた
そしてなのははこの淫らな姿で『ご主人様』にご奉仕する事を考えて股間を濡らした。


夜はまだ終わらない、故に夜明けはまだまだ遠い…


END

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