壱
伊吹萃香の式鬼化に成功してから、
2年の月日が流れようとしていた。
今宵で機は熟し、我が念願の叶う機会が訪れた。
そう、我には一つの大きな目的がある。
それは朽ちていく肉体を捨て、新たな肉体を得る事。
鬼の体は人間の脆弱な肉体とは訳が違う。
加えて、この萃香という少女は美しい。
我の新たなる肉の器に相応しい、と感じさせるに足るものだ。
人魂転移の法。
それは他者の体を乗っ取り、自らの新しい肉体とする
外法である。
今宵は全ての条件がそろう唯一の夜。
この儀式にて、我は新たなる存在に生まれ変わろう。
印を結ぶと、萃香は虚ろな表情で下腹部をさらす。
さらに清めの酒を自らへとふりかける。
今宵こそ、脆弱な人の器を捨て…
我はこれより鬼となる。 |