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フェイトはボォッとしたまま、虚ろな瞳でユーノを見つめていたが…
程なくして笑みを浮かべた。
でも、その笑顔は今までユーノが見たことが無い笑顔だった。
一言で言うと妖艶。
口はしを吊り上げニヤッと笑いながら、
どこか蔑んだ様な表情でユーノを見つめている。そして…
『誰に向かって口をきいてるの?』
「…はい?」
『ユーノ、あなたは役に立たない子ね、私をこんな風にして…』
「あの〜、フェイトさん?」
『誰がフェイトですって?呪われた名前で私を呼ぶだなんて…
どうやらあの子と同じように貴方にもお仕置きが必要なようね』
「あれ、これってもしかして…」
その瞬間、ユーノの体がバインドで縛られた。
混乱するユーノを他所に少女はおもむろに立ち上がると、
妖しい笑みを浮かべたまま、少年を軽く蹴って床に転がした。
そして、ベットに腰をかけると足を組んで蔑むように見下ろす。
その表情やしぐさ…、ユーノは該当する人物を一人思いついた。
「まさかプレシア・テスタロッサ?フェイト、君の思う強い人って…?」
『そんな事はどうでもいいわ。ユーノ、ここまで這ってきなさい』
高圧的な態度で命令をするフェイト。
ちょっと考えれば分かりそうな事である。
フェイトは強い人、というよりは…
自分の人生の中で一番怖い人をイメージしてしまったようなのだ。
そして、今のフェイトはあのプレシアになりきっている。
ユーノは彼女がどんな目にあっていたのかある程度知っていたので、
ここから先自分に待ち受ける事態は想像がついた。
まずい、非常にまずい展開だ!
『はやくきなさい!!本当にグズなんだから』
「フェイト、正気に戻って!これじゃぁ、執務官以前に人間失格になっちゃうよ!」
『口の利き方を知らない下僕ね。ますますお仕置きが必要だわ』
ゾクッとするような笑みを浮かべるフェイト。
バルディッシュを召還すると、デバイスの形状が鞭状に変化する。
あのデバイスにそんなフォームがあったのかと関心してる場合じゃない。
アレが自分に振り下ろされる。それは勘弁願いたい。
「はいはい!!ただいま参りますぅ!!!」
『そう、素直に言う事を聞くなら痛くしないわ…』 |