■8
『これから、あなたには色々と手伝いをしてもらうことになりますわよ。
いいですね?』
『もちろんです、クアットロ様。どのような命令でも、わたしは従います。
それがわたしですから』
凶悪なデバイスを用いるキャロ…プリマヴェーラは
元々の召喚士としての強大な力が暗黒の力で更に強化された。
これで彼女は邪なる存在を呼び出す邪竜召喚士として、
破壊と絶望を撒き散らす存在となるだろう。
幼き召喚士はもはや、かつて凶悪な犯罪者として捕らえようとした
クアットロの命令に、何の疑いもなく従っていた。
自らの本当の名前を忘れ、優しさと健気さを闇色の邪気に染められて。
その様を従えた当の本人は内心で嘲笑っている。
『(ああ、なんて愉快、なんて滑稽、そしてなんという快感―――)』
脳髄が熱い。
召喚士を下僕へと貶めた幻惑の使い手は愉悦に浸る。
「(ドクターの研究があってこそ、存在が許されたはずの人形
フェイト・テスタロッサ。そして…
私を屈辱の底に沈めた憎むべき存在、高町なのは。
あの忌々しい女どもが育て上げた子供が!
この私に、忠実に従っている!)」
熱い吐息が漏れた。
歓喜が唇を奮わせる。
下半身が熱を、湿り気すら帯び始めた事を自覚しながら、
なおクアットロは快感に酔いしれる。
『(――本当に愉しい)』
いっそこのままプリマヴェーラにあの赤毛の出来損ないを殺させようか。
そうすれば、あの金髪の執務官はどのような
絶望の表情を浮かべて嘆き悲しむだろうか。
あるいは直接、Fの遺産どもをだまし討ちさせるのも面白い。
愛してやまない存在に寝首をかかれ、絶望の中で命を落とす。
さぞ、滑稽な表情を見せてくれるだろう。
だが、そんなことでは満たされない。
Fの遺産、人形どもをいくらいたぶっても、満たされない。
この心の渇きはミタサレナイ。
そう、私のモクテキハ・・・
「(ソウ、そうよ!
アレガ、あの女が、
あのエースオブエースこそが私のモクヒョウ)」
すべては、その為。
親友と信じた女性の手で、あの女は最期を迎えなければならない。
『(そう、それだけが、あの女の生涯が無価値であったということであり。
全てが無駄ということであり!
ナニモカモ意味はなかったのだとぉ、あの女に思わせるぅぅ!!
ただコロスことなどしないわぁ。
一片の希望もなく、
私が味わった痛み、屈辱…
否!それ以上の絶望を抱いたまま!!
あの女には果ててもらうわぁぁ!!!)』
あぁ、その為には、あの人形が必要だ。
人形の宝物は手に入れた。彼女は、必ずやって来るだろう。
彼女を手に入れてこそ、あの女への究極の復讐が果たせる。
「(あぁ、あぁ…、待ち遠しいですわ)」
さぁ、早く来るがいい、フェイト・テスタロッサ。
あなたにもこの小娘と同じ末路をたどらせてあげる。
跪いて、私の為ならなんでもする存在に変えてあげる。
『(早く。
はやく!
ハ ヤ ク ゥゥ!!)』
さぁ、さぁ!ここに来い。
高町なのはを殺す、私の忠実なる刃となる為に。 |