■9 HAGAL
天界で血の海に沈むオーディンが発見され、
同時に姿を消したその娘の捜索が開始されてから数日後。
ミッドガルドにおいて魔王軍の総攻撃が敢行される。
その際、オーディンと同じ銀髪で、漆黒の鎧を身に着けた少女が魔王軍の先頭を駆け、
天界の兵を切り捨てた瞬間、天界の神軍は士気を阻喪したという。
主なく士気も失った軍はもろい。
瞬く間にミッドガルドは魔王軍の、いやデュ―クの手に落ちた。
今やミッドガルドの主となった者の部屋。乱れる男女の姿があった。
まだ女というよりは少女と呼ぶべき銀髪の娘を喘がせながら、
デュ―クはこの娘に父の暗殺を命じた時の返答を思い出していた。
あの時、ヒルデガードは笑みを浮かべたまま、こう答えていた。
『はい、デュ―ク様。このヒルデガードにお任せ下さい。
父?そうですね、私のお父様です。
だから殺せない、とでも?
まさか。
例えどのようなことであれ、デュ―ク様のご命令なら私はそれを成し遂げましょう。
そう、すべてはデュ―ク様の為に…』 |